電子QSLシステムに関する答申について

 

 QSLの電子化(電子QSLカードの交換、交信データの電子的照合確認)は世界的な動向であり、これを否定する余地はないと考えます。電子QSLカードの交換を行わない場合であっても、照合確認結果がアワードの申請に利用されるのであれば、QSLカードの交換と同じ意味を持ちます。一方で、JARLと各国アマチュア団体等との紙QSLカード転送業務は、両者にその希望がある限りは継続されるでしょう。また、国内の会員間の紙QSLカードの転送業務も会員にその希望がある限りは継続するでしょうから、転送数は減少しても紙QSLカード転送業務が全廃することはないと思われます(紙QSLカード2018 年度転送実績:国内793 万、国際135万)。

 QSLの電子化については、電子ログシステムと密接な関係にあります。各種存在する電子ログパソコンアプリやスマホアプリに電子QSLカード作成機能やSMTPを付加し、相手のメールアドレスを知る仕組みがあれば電子QSLカードを送ることができます。また、クラウド型の電子ログシステムでは、交信データの照合確認機能の付加は容易ですし、電子QSLカード作成機能を付加すれば、交信データの入力終了後速やかに相手に電子QSLカードを届けることが可能となります。それぞれのシステム間での交信データの互換性を確保するためのツールは提供されつつあります。利用者の利便性を考えれば、さらにそれぞれのシステム間のインターオペラビリティの進展もあるかもしれません。

 答申にある電子QSLシステムは、紙のQSLカードの交換をそのまま電子QSLカードの交換に置き換えるものであり、交信データの照合確認、アワード申請への利用などはなく、会員による国内の交信による電子QSLカードの交換のみです。

 答申にある電子QSLシステムの開発着手を決定するためには、上記のような国内外の現状・動向を踏まえて判断することが不可欠です。しかし答申には、他のシステムと電子QSLシステムとの関係に関する評価が記載されておりませんので、開発着手を決定するための情報としては不十分であると考えています。