非常通信について

 過去数々の実績と成果があり、アマチュア局による社会貢献の最たるものだろうと思います。

 電波法第52条で、無線局は「免許状に記載された目的又は通信の相手方若しくは通信事項の範囲を超えて運用してはならない。」と規定され、無線局の目的外使用が禁止されていますが、その例外として同条第4号で非常通信が認められています。非常通信は、地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信と規定しています。

 この条文をそのまま読むと、非常通信を行うための前提条件がかなり厳しいと思われますが、以下の総務省の説明にあるように、この規定の運用はかなり柔軟に行われているようです。

www.tele.soumu.go.jp

 大災害発生時等において、非常通信を円滑にかつ効率よく行うためには、非常通信を行う際の体制整備を事前に行うことが不可欠です。

 災害対策基本法に基づき内閣府に置かれた中央防災会議が作成する災害対策基本計画では、「第2編 各災害に共通する対策編」・「第6節 迅速かつ円滑な災害応急対策,災害復旧・復興への備え」・「2 情報の収集・連絡及び応急体制の整備関係」・「(3) 通信手段の確保」に以下の記載があります。

www.bousai.go.jp

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○国,地方公共団体等は,災害時の情報通信手段について,平常時よりその確保に努め,その整備・運用・管理等に当たっては,次の点について十分考慮するものとする。

(前略)

・携帯電話・衛星携帯電話等の電気通信事業用移動通信,業務用移動通信,アマチュア無線等による移動通信系の活用体制について整備しておくこと。なお,アマチュア無線の活用は,ボランティアという性格に配慮すること。

(後略)

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 基礎自治体の防災会議が災害対策基本法に基づき作成する地域防災計画において、アマチュア無線団体を災害発生時の情報の収集・集約、防災関係機関等への情報提供を行う団体として明確に位置付けて、その団体に対して他の防災関係機関と同様に260MHz帯防災行政無線の陸上移動局を配置している例があります。

 災害発生時等における基礎自治体との協力連携の体制整備は、既に様々な形で行われていると思いますが、ここ数年大災害の発生が連続していることもあり、アマチュア無線の社会的存在意義の向上のためには非常に有効です。

 なお、電波法第74条第1項の「非常の場合の無線通信」は、アマチュア局において行われたことは過去一度もないと思います。