WRC-23最終文書(Provisional Final Acts)について

11月20日にドバイで始まったWRC-23(2023年世界無線通信会議)が12月15日に終了しました。すでに最終文書(ただしProvisional Final Acts)が公表されています。
発効は2025年1月1日とのことです。

WRC-23 – World Radiocommunication Conferences (WRC) (itu.int)

議題9.1-bについては、結局RR(無線通信規則)が改正され、分配表1240-1300MHzについては、脚注が追加されました(21ページ)。RRの規定はITU加盟国を拘束します。

なお、現在付されている番号5.A91Bは暫定的で、あらためて正式な番号がふられます。

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以下は追加された第5.A91B号の仮訳です。

過去のWRCの最終文書とこれを翻訳した総務省告示を比較しますと、RRで使用される英単語に対応する日本語の単語や日本語での表現の仕方はほぼ決まっているようです。これに従っているかどうかは確認していません。

なお、WRC-23最終文書が総務省告示として公表される時期は過去の例によれば2024年末ごろだろうと思います。

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追加

第5.A91B号 周波数帯域 1 240-1 300 MHz 又はその一部におけるアマチュア業務及びアマチュア衛星業務の運用を許可する主管庁は、第5.29号(勧告ITU-R M.2164の最新版参照)に従って、アマチュア及びアマチュア衛星 業務が無線航行衛星業務(宇宙から地球)の受信機に有害な干渉を生じさせないことを保証しなければならない。権限を有する主菅庁は、アマチュア及びアマチュア衛星業務の局によって生じた有害な干渉の報告を受け取った場合、この干渉を速やかに除去するために必要な全ての措置を講じなければならない。(WRC-23)

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RR第5.29号は以下のとおりです。

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5.28 3) Stations of a secondary service:
5.29 a) shall not cause harmful interference to stations of primary services to which
frequencies are already assigned or to which frequencies may be assigned at a later date;

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仮訳

二次業務の局は、周波数が既に割り当てられている、又は将来割り当てられる可能性のある一次業務の局に対して、有害な干渉を引き起こしてはならない。

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マチュア業務及びアマチュア衛星業務はこの周波数帯では元々二次業務ですから、各国主管庁は「二次業務の局は、周波数が既に割り当てられている、又は将来割り当てられる可能性のある一次業務の局に対して、有害な干渉を引き起こしてはならない。」ことを達成する義務が今回のRR改正とは関係なく元々ありますので、これを達成するための一つの方法が今回のRR改正でRRに盛り込まれたということでしょう。勧告ITU-R M.2164の内容を強制的なルールとして制定するかどうかは各国主管庁の判断だろうと思います。